高強度フェムト秒レーザーパルスの石英中の伝播

応物学会2002年春発表資料(PowerPoint 546KB)
CLEO/QELS 2002 発表資料(PowerPoint 604KB)
K. Ishikawa, H. Kumagai, and K. Midorikawa, Phys. Rev. E 66, 056608 (2002)

フェムト秒レーザーパルスの形状は、媒質中を伝播するに従って、複雑な線形および非線形効果のために劇的に変化します。私たちは、そのようなパルスの振る舞いを、シミュレーションによって研究しています。自己収束の起こるレーザーパワーの閾値Pcrは、波長800nmの場合、空気では3 GW、石英では2.2 MWであるが、従来の研究で用いられたパワーは、気体中でその数十倍まで、固体中では数倍までである。これに対して、私たちは、Pcrの数百倍という高出力領域を対象としています。

例えば、Pcrの数百倍の高強度のレーザーパルスの石英中の伝播を、軸対称3次元数値シミュレーションによって研究しています。このためには、群速度分散・回折・カー効果・プラズマ非収束化・多光子吸収・自己急峻化・space-time focusingの効果を考慮したパルス伝播に対する非線形シュレーディンガー方程式を、多光子バンド間遷移による伝導電子密度の時間変化の式と連立して解きます。

図1 石英ガラス中に集光入射されるフェムト秒レーザーパルスの体系図

図1のように、波長800nm、パルス幅130fs、ビーム径200ミクロン、入力エネルギー135マイクロジュール(470Pcr相当)、真空中での焦点の距離10.9mmのパルスが石英に入射した場合のパルス波形の変化を図2に示します。まず、低強度領域の場合と同様に、伝播に伴い自己収束・プラズマ生成・プラズマ非収束化が順次起こります。しかし、その後、パルスは時間的空間的に次々に分離し、図2下段に見られるように多重円錐形の強度分布を持つようになります。これは、レーザーパルスの強度がPcrよりも2桁程度以上高いときに初めて見られる新しい現象です。

 

図2 入力エネルギー135マイクロジュール、パルス幅130fsのパルスの強度分布の変化

 

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