高強度軟エックス線パルス同時照射による
ヘリウムイオンからの高調波発生の飛躍的増大

応物学会2003年春発表資料(PowerPoint 632KB)
K. Ishikawa, Phys. Rev. Lett. 91, 043002 (2003)

近年の高次高調波発生技術の進歩により、高強度のコヒーレント軟エックス線パルスの発生が可能になってきています。チタンサファイア(Ti:S)レーザーの27次高調波(波長29.6nm)で330nJものパルスエネルギーが報告されており[1]、これを10mm2の領域に集光すれば1014W/cm2という高輝度に達し、軟エックス線領域での非線形光学効果の観測が可能であると期待されます。また、He+の2光子電離の可能性も示されています[2]。

私たちは、高強度のチタンサファイアレーザー27次高調波と基本波をヘリウムイオンに同時照射した場合の高調波発生について、時間依存シュレーディンガー方程式を数値的に解くことによって検討しました。ヘリウムイオン(He+)はイオン化ポテンシャルが大きい(54.4eV)ため、カットオフ次数は高くなるものの、基本波のみを用いた場合の発生効率は極端に低くなります(Fig.1)。これに対し27次高調波を同時照射すると、カットオフ次数は高いまま、発生効率が十数桁も増大することが分かりました(Fig.1)。

これは、27次高調波によって2s, 2p準位および付近の仮想準位への遷移が促進され、トンネル電離が飛躍的に容易になるためです。この劇的な効果は、より短波長の高強度パルス光源の開発への道を拓くものと期待されます。

Fig. 1. Top: harmonic spectrum from He+ irradiated by a combined laser and its 27th harmonic pulse. Middle: from H by laser. Bottom: from He+ by laser.

[1] E. Takahashi et al., Phys. Rev. A 66, 021802 (2002).
[2] K. Ishikawa and K. Midorikawa, Phys. Rev. A 65, 043405 (2002).

 

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